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2005年05月15日(日) 痛みの紡ぎだす優しさ

続けて予定に入れていたロケ。

学生の頃よく使っていた電車に揺られながら目的地へと向かう。
事前にいただいていた行き先を明示した地図を手にしながら、住宅地をしばらく歩く。
やがて表札が見え,ノックをする。
快く笑顔で出迎えて下さり、すでに実習をしていた教室の生徒さんとも挨拶をする。
生徒さんたちもさすがにイタリアづいていて、その光景には僕の方が驚いていた。

この日はラヴェンナでモザイクを学んでいた岡田七歩美さんを訪ねた。
モザイク職人を取り上げることも、作品に幅を与えるためであった。
岡田さんには僕の方から突如としてコンタクトを取り、
これから取り上げるモザイクアーティストについての指針を伺っていた。

そんな突然のお願いにも関わらず、懇切丁寧に応対して下さった「温かさ」が
この作品にしっくりくるので、その「温かさ」をおさめるためにカメラを手にしていた。
この辺の僕の直感には間違いはない。


愛の自己表現


岡田さんは2人の生徒さんがいるにも関わらず、
いろいろと話して下さった。
どのようにモザイクを造り上げていくかを実際に見せて下さったり、
部屋に所狭しと置かれてある材料を紹介して下さった。
そして家の奥までどんどん入り、
台所一面モザイクにした「作品」と出会った。

2つの家をつなぎ合わせたという。
奥行きがかなりあり、
その上そこいら中に岡田さんの作品がちりばめられていた。
ホントに表現が好きで心底愛しているんだろうな、と思わせられる。
男の僕には表現できない部分、
女性の繊細さのある作品群をたくさん見たような気がする。
それは横にいた生徒さんの話を聞いて感じたことである。

僕が「取材」に来たからであろうか?
岡田さんはとても親切に過去の資料も出して下さり、語りも入った。
ふと語りだした自分に気がつき、我に返り話を止められたが、
でもそのまま続きを聞きたかった。

笑顔に見える大きなもの


一体この、人に対する優しさはどこからくるのだろう。
岡田さんがラヴェンナにいた頃に取材された本に書いてあったことを思い出した。
目の前にいる岡田さんとはまったく違うイメージのことが書いてあった。
いま見える岡田さんは健康的で愛に溢れている,
本で読んだのは、対人関係に悩み暗中模索している姿が多かったような気がする。

人への優しさ、愛情。
それはその人がそれまで経てきたものが現すと僕は思う。
岡田さんはまだ僕の聞いていない多くの痛みを感じてきたんだろう。
それが作品にも愛を与えていっているんではないかと思う。
岡田さんの世界が僕たちを包み込んでくれているようでとても「温かさ」を感じていられた。

とにかくせせこましいちっぽけなどうでもいいような世界の中で、
ちっちゃな価値観の中で人を傷つけ、欺いたりしていた自分が、
日本を出るとクソッタレに思えるようになっていく。
イタリアにいるからといって、心が大きくなるとは思わないが、
日本にいるときにはない憤りがあり、それを経験していると逆に、
人を許せることのできる容量の大きさというか、遊び・余裕の感覚が育まれる。


岡田さんのいたイタリア人社会と僕のいるコミュニティは、まったく異質のものであろう。
だとすれば岡田さんの経験してきたことを知るのですら、僕にとっては新鮮なことである。

実は彼女の中に秘められている悲しみは、作品の中にも込められている気もする。
悲しみだけではなく愛情も伴っている、人生そのものなのでないだろうか?
それが人の気を引いてやまない。
表面的な明るさだけが人を形成しているわけではない。
裏にある強烈な情熱に人は心動かされるはず。
作品は見るのではなく自分なりに読み解くものである。
そんなことも考えた。

岡田さんの信念、強さは隠そうにも隠しきれず、語りだした彼女自身が物語っていた。
自分では控えめにしようとしていたが、自然体の彼女はスペースを紡ぎだしていた。


美しさの中へ


いろいろと話を聞くことができたのは、単に映画のためではなく、なにより自分自身のためになった。
時間もオーバーし、生徒さん達にとっては余計なことばかりになってしまい、
邪魔にはなっていなかったかと心配していた。
しかし、ここまで岡田さんの話を聞くこともないのでよかったと言っていて安心した。
彼女が日本に帰るきっかけとなった話も聞いたが、辛いことも楽しさに変えようと、
明るく生きている岡田さんの生き様はとても美しく、輝いて見えた。
きっといつまでもそうやって生きていって下さるのだろう。
そうあって欲しいと願う。

美しい芸術家・岡田七歩美さんは僕の中の永遠の憧れでもある。




コメント

■痛みの紡ぎだす優しさ

生徒さんの一人がイタリアに留学していたことがあり、
もう一人もイタリア語を話していた。
ロケ現場にいたそれぞれがイタリアに関係していて、
僕も逆インタビューなどされたり、とても家庭的ないい雰囲気を過ごしました。
最後に手短にきっちりと撮らせてもらおうとしたら、
岡田さんが雄弁になり、おかげで充実してしまいました。
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池田 剛 2005/07/05 07:17

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